G.T.リートフェルト設計の世界遺産の家

シュレーダー邸東側外観

 シュレーダー邸は、ユトレヒト中央駅から3kmほどの高速道路沿いの場所にある。竣工当時には無かった高速道路が、邸からの景色を酷く悪いものにしたことは明白だが、東京の日本橋上に高速を通す暴挙に比べればマシ。高速 を挟んだ反対側に管理事務所がある。その建物もリートフェルトの設計、シンプルで良い。取材許可は得ていたので速やかにことは進む。これは語学が達者なkuさんのおかげで、日本語さえ満足でない私は海外にいくと無言になる。英 語はマスターしておくべきである。

シュレーダー邸 伝声管とメッセージ

シュレーダー邸北東外観

 案内のお譲さんは背も高くボリュームもある快活な人。取材・撮影時間は1時間半、つまり猛スピード。世界遺産だから見学者が来ないうちに片づけなければならない。40坪ほどの小さな家だから動きは小さいが、なにせ忍者屋敷 のように仕掛けが沢山ある。あけたり閉めたりの写真もいるから、大変なカットになる。直感と読みと体力の勝負である。終わる頃には外に見学者の列ができていていた。どうやら待たせて撮影をしていたようだった。それにしても細かい空 間の多い家だった。リートフェルトは、そんなに小さい男とは思えない。なぜこんな狭い空間が多いのだろう。日本人の中でも小さい自分が狭く感じるのである。シュレーダー夫人はとても小さな人だったらしいが、共に暮らしたリートフェルトは 不自由ではなかったんだろうか、などとどうでも良いことを考えた。名作レッド&ブルーの椅子が真っ赤な床の上に置かれていた。赤くない床の方が引き立つのに・・と、我には無い色彩感覚に??。画家モンドリアンの絵の立体化といわれる この住宅で、ものを創るのは個人の才能、センス、時の流行すたりで作っているうちは作家ではなく、何んとか屋だなぁ・・と己れを棚にあげてから思った。シュレーダー邸は楽しい家だが、ぜひ住みたいとは思わない。幾分窮屈であるのと、 仕掛けはあまり好みではない。住むならミース設計の「トゥーゲントハット邸」の空間がいいなぁ・・などと可能性0の選択を空想した。

シュレーダー邸 リートフェルト書斎外部ベンチ シュレーダー邸 玄関ドアハンドルと郵便受

 最近、TVでこのシュレーダー邸が放映された。話は専ら2人の不倫的恋愛になり、建築的な話は少なかった。2人の死後、遺族の手で遺骨は別々の場所に埋め返されたとTVは報じていた。どこの国にも無粋な奴がいるものである。 人は、20代というとても未熟な時代に生涯の相手を決めて「結婚」、暴挙である。最良の相手は、その後の長い時間の中で現れる可能性がはるかに高い。種の保存は結婚という形態がなくてもできる。結婚以上の男女の素敵なあり 方を考え出せない人間はおそまつである、不倫は結婚が生んだ図式的副産物。結婚を優先しない若者が増えたと聞く、人が少し利口になり始めたのかも知れないとTVのENDマークを見ながら考えた。私は変か?。

海外取材記
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