甲府盆地には古刹が多い。国宝の仏殿がある清白寺、観光客で賑わう恵林寺、そのすぐ近くにある向岳寺は中門が国重文である。 5体の国重文の仏像を持つ放光寺は、四季の花も楽しめる。丹波山村に向かう街道の途中にある雲峰寺は、その名の通り高い位置にあり、遅咲きの桜の名木で知られ、国重文の建物を有している。 中央道近くの一宮町には慈眼寺があり、ここも鐘楼などが国指定である。 古刹、名刹が比較的狭い範囲にまとまってあるということでは、関東甲信越でも鎌倉に並ぶ地であろう。 甲府市にも見逃せない数ケ寺がある。
大善寺 山梨県甲州市勝沼町
そんな中でも大善寺は、国宝の本堂と見事な仏像群を有する必見の寺である。甲州街道の東京寄りに位置する。中央道下り線で、勝沼IC手前辺りの右手高台に山門や本堂が遠望できる。 柏尾山大善寺は新儀真言宗智山派で、養老2年(718)行基の開基。聖武天皇より寺号と御定筆の勅額を賜る。
国宝の本堂は、薬師三尊像(国重文)を安置するところから薬師堂ともよばれる。北条貞時が勅名を奉じ、弘安9年に再興、中世和様式の典型的な仏殿建築である。 方三間、寄棟造り茅葺屋根。内部は前から二間通りを外陣、次の二間通りを内陣とし、その後方と入り側一通りを後陣及び脇とする。 内部空間の豪放さには目を見張らされる。内陣須弥壇に国宝の厨子を置き、本尊(秘仏・平安初期)を納め、左右に日光、月光菩薩及び薬師十二神将などの仏像群を安置する。 中でも朱色の力強い十二神将たちは圧巻である。
撮り終えて本堂の裏の高台に登る。葺き替えられて間もない本堂の茅葺屋根の北側には、少しの雪があって美しい。屋根の彼方には、残雪の雪の甲州の山並みが輝き、春を待っていた。